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作務衣に着替えカンナを手にすると、その柔和な表情に光が射し込んだように見えた。粗削りされた木刀に、丹念にカンナを入れる。「カシュ、カシュ」と心地よい音が響くと、床には鰹節を削ったような薄く、細かい木片が舞った。 「乾燥した良い木ほど、カンナ屑が細かいんです。音も違います。隣で作業している者が、今どんな木を削っているか、音を聞いただけでわかりますよ」 都城を代表する木刀職人の一人、荒牧康雄さん。昨年11月、都城木刀の品質向上に長年努めたことなどが評価され、国が卓越した技能者に贈る「現代の名工」に選ばれた。受賞を喜びながらも、「心から満足できた仕事はほんのわずか。まだまだこれから」という。 全国の8割以上のシェアを占める木刀産地・都城。その歴史は江戸末期に薩摩示現流の太刀を見本に木刀を作ったのが始まりといわれるが、現在の反りのある形は大正時代、荒牧さんの祖父・和三さんによって完成された。 木刀に刻まれる「日向国都城住人二代目和弘作」の銘は、父の号だ。その父の技を「見て、盗んで」自らの技を磨いてきた。 現在、荒牧さんの製作所では、剣道の練習で使う一般用の木刀から、示現流、柳生流、一刀流など流派別の木刀、装飾用の高級木刀、さらに薙刀や槍、木銃などの武道具を含め、二百種類ほどの製品を作っている。 作業は機械で行う部分もあるが、種類ごとに異なる微妙な反りや、手のなじみ、最適な重量バランスなどを整えるには、手作業によるカンナ掛けが不可欠で、その精度の高さから、全国の愛好者に支持されている。 「木刀は切っ先三寸が命。まさに木刀に命を吹き込む工程ですので、ここだけはまだ私が手で仕上げます。早く、私を追い越すような職人が出てきてくれるといいですね」
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