宮崎県季刊誌「Jaja」じゃじゃ

Jajaバックナンバー

http://www.pref.miyazaki.lg.jp/

松田丈志選手

久世コーチと一緒に世界をめざしてきました。
その夢を、北京でかなえたいと思います。

千葉で行われる「世界競泳2007※」に向けて、アメリカアリゾナ州の高地合宿から帰られたばかり。高地トレーニングはいかがでしたか

北アリゾナ大学のプールで練習をするのですが、内容そのものは普段とあまり変わりません。ただ標高が2100メートルくらいありますので、体に負荷がかかっていい練習になります。世界競泳は来年の北京五輪につながる大事な大会ですので、自己ベスト記録を狙えるように追い込んできました。

普段はどのような練習を?

1万メートルの泳ぎ込みを午前と午後に一本ずつというのが基本です。一本泳ぐのに2時間から3時間かかるのですが、高校生の頃からこれを生活に組み入れています。大体、朝6時にはプールに入って一本泳ぎ、それから授業を受けたりして、また夕方に練習という具合ですね。

ビニールハウスのヒーロー

今年の春まで所属されていた東海(とうみ)スイミングクラブは、東海中学校(延岡市無鹿町)のプールが練習場ですね。松田さんの活躍でビニールの屋根も有名になりました。

東海SCは、競技力の向上というよりも、水泳に親しもうという地域のクラブとして、地元の方々が、現在もお世話になっている久世由美子コーチを招いて作ったものなんです。来年で30周年になります。姉がここに通っていたこともありまして、僕も4歳の時からここで水泳を始めました。

幼い頃から水泳を続けてきて、「おや、自分は人より速いぞ」と思ったのはいつ頃でしたか。

いや、まだそういう風に思えたことはありません(笑)。あえていうと、中一の全国大会で4位に入った時に、『がんばれば、まだ上にいけるぞ』と思ったことはありますね。小学生の頃は、全国大会に出てくるような人たちは別世界の人間のように感じていました。『彼らには、とてもかなわないな』と。それ以前に、『え、君たち、一年中泳いでるの?』という感じで(笑)。

プールに屋根がなかったのですね。

そうですね。中学校のプールですから。冬場の水温は10度を切ってしまうので、泳いでいると頭がキンキンしてきて、とても長くは水に入っていられないんです。ですから、思う存分泳げる時期は限られていました。それから、父兄の方々がカンパや廃品回収などでお金を作ってくださって、プールにビニールの屋根を作ってくださいました。ほんとにうれしかったですね。

現在は、ボイラーが設置されて温水も使えるようになりました。

中学時代、全国五輪ジュニア大会で200、400、1500メートル自由形を三連覇しましたので、周囲はどこか県外の強豪校に進学するものと思っていたようです。でも僕は地元で、久世コーチと一緒に世界をめざしたかった。そういうこともあって、延岡市の補助でプールにボイラーをつけていただきました。

ライバルたちにとっては当たり前の環境が、ようやく整ったわけですね。

うれしかったですね。よし、これで一年中、思う存分泳げるぞと。

マスコミなどで、「ビニールハウスのヒーロー」と呼ばれることがありますが、この呼び名についてはいかがですか。

気に入っていますよ。地元の方々が、僕たちのためにいい環境を作ろうと、一所懸命、こしらえてくださったものですから。いくら水泳が好きでも、コーチをはじめいろいろな方々の支えがなくては、これまでやってこられなかったわけですから、僕は恵まれていると思います。

北京五輪では金メダルを狙います

4歳から始めて、20年も水泳を続けてこられましたが、努力をこつこつと継続していくためのポイントはありますか。

僕も水泳以外のことは、あまり長続きする方ではないのですが(笑)。大きなことも小さなことの積み重ねですので、小さな目標をひとつひとつクリアしていく、ということでしょうか。僕の場合、水泳が好きだということと、たとえば自己記録を更新したとか、そういう努力が報われた時の喜びの方が、練習のきつさをずっと上回っているので。

来年の北京五輪に向けて、これから水泳界も盛り上がっていきますが、競泳の見どころについて教えてください。

やはり後半だと思います。1500メートル泳いで、百分の一秒差で勝ち負けが決まる世界ですが、スイマーの底力は後半に出てくるものなので。200なら最後の50メートルで、それまでの練習で積み重ねてきたものが出てくると思っています。

宮崎の皆さんへのメッセージを。

水泳界にはサーフィンをする人が多いので、よく宮崎のサーフポイントの話をしています。最近は東国原知事の活躍で、宮崎の話題がしょっちゅう出てきて、僕も励みになりますね。たくさんの方に支えられて、ここまでやってこれましたので、目の前の世界競泳ではとにかく自己記録の更新を目標に、それから北京五輪では金メダルを絶対にとりたいと思います。今までめざしてきた夢をかなえたいですね。

本日はありがとうございました。今後のご活躍に期待しております。

7月31日 宮崎観光ホテルにて

久世由美子コーチと
4歳の頃から指導を受けている久世由美子コーチと。

まつだ・たけし
1984年6月23日宮崎県延岡市生まれ
4歳から東海SCで水泳を始める。延岡学園高校から中京大学に進み、現在は中京大学大学院在学中。主な種目は200mバタフライ、400、800、1500m自由形。アテネ五輪400m自由形決勝進出、世界水泳2005では200mバタフライで銀メダルを獲得。ミズノスイムチーム所属。

※世界競泳2007
8月21日〜24日、世界のトップスイマーを集めて千葉県国際総合水泳場で開催。松田選手は200mバタフライ、400m自由形、1500m自由形の出場三種目で、いずれも決勝進出の活躍をみせた。