新鮮、豪快、港町の味2
魚うどん

戦時中、米も小麦も不足した油津。窮余の一策で生まれた美味。
戦前、空前のマグロ景気で湧いた油津だったが、やがて第二次大戦が始まり、空襲が激しくなると漁も沖には出られなくなった。近隣の町との流通もむずかしくなり、田畑の少ない油津では米なども不足し、近場で獲れる魚を食べるしかなくなった時代があった。その時、魚でうどんのようなものを作れないか、ということで生まれたのが魚うどんだ。
すり鉢で擦ったトビウオなどの身に、小麦粉、片栗粉、卵、塩を加えて、トコロテンを作るような専用の道具で麺にする。鍋で炊くと、麺からいいだしが出るので、醤油で味を調えるだけでよい。時間がたってものびにくく、しこしことおいしい。
カツオの腹皮

港町でしか食べられなかったトロの部分、
たっぷりとのった脂と香ばしさ。
冷蔵技術がなかった時代、カツオをさばく際には、頭と一緒に、痛みの早い腹身を捨ててしまっていた。特に鰹節を作る地方では、これが大量に出るのだが、マグロでいえばトロにあたる部位であり、脂がのって非常においしい。
もともと、漁師町周辺だけで食べられていたのだが、最近では一夜干し風に仕上げたものが、全国的に知られるようになり、都心のデパートなどでも真空パックされたものが売られている。とれたてのカツオを姿のまま求めてきて、刺身をとり、腹皮を塩焼きにすると、新鮮で軽やかな脂がほとばしるように浸みだしてくる。地元ならではの美味だ。ただし、冷めると風味が落ちるので、焼きたてを味わいたい。
カツオのつけ焼き

余った刺身を醤油と酒に漬けておき、翌朝、焼いて食べる。
懐かしい家庭の味。
新鮮なカツオは、まず刺身で食べる。余ったものは醤油と酒に漬けておいて、カツオめしやお茶漬けにする。それでも余るようだと、そのまま焼いて食べる。カツオのつけ焼きは、地元ではなじみ深い家庭料理だ。
マグロのびんた煮

マグロの頭を割って、目玉と煮込む。
DHAやコラーゲンもたっぷりだ。
脳の活性化を促すというDHAや、美容効果があるというコラーゲンに期待して、マグロの目玉が高値を呼んでいる。マグロのびんた(頭)には、目玉以外にもしっかりした肉が多く、骨の隙間を箸でせせりながら食べていくのは楽しい。地元の鮮魚店では、大きな頭を丸ごと売っていることがあるので、適当な大きさに割ってもらって家庭でも作ってみたい。
マグロのごんぐり煮

マグロの胃袋を丁寧に煮物にさっぱりとしながら、奥深い味。
ごんぐりとは、マグロの胃袋のこと。大型の魚は、内臓がうまいものが多いが、ごんぐりも歯ごたえがよく、噛みしめるほどに、しみだしてくるうまさがある。地元では料理の素材として、湯がいたものを売っているので、家庭で作ってみるのも楽しそうだ。鍋でごんぐりを炒め、出し汁と味噌、醤油、砂糖、みりん、しょうがなどを加えて煮込む。圧力鍋を使うと、ふっくらと柔らかく仕上がる。
マグロのシシゴロ煮

地元でも貴重品となったマグロの心臓
ハツに似た食感を味わう。
マグロのシシゴロ(心臓)は、地元でもなかなか食べられない珍味だ。冷凍で持ち帰る遠洋マグロは内蔵を捨ててしまうし、近海獲れのものも、姿のまま出荷されるということもあるのだが、何しろ一つひとつが小さい。これを大切に集めておいて、煮付けにする。食感は、まさに焼き肉のハツと同様なのだが、さらに滋味深い。イタリアには、塩漬けにして熟成させたクロマグロの心臓の生ハムがあり、高級前菜として珍重される。
ビンチョウマグロの腹身刺し
新鮮なビンチョウマグロのトロを、刺身で食べる贅沢。
ビンチョウマグロの腹身を刺身で食べる。味わいが淡泊で、どちらかというと缶詰に使われることが多いビンチョウマグロだが、港に上がったばかりの、それもトロの部分なのだから、想像以上においしい。値段は安いのだが、新鮮な腹身は、なかなか手に入らないのが残念だ。地元では、カツオの腹身も同じように刺身で食べる。こちらも、なかなか食べる機会がない、港町の味。
マグロ丼
近海獲れの生マグロをどんぶり飯にのせて
地元産の甘い醤油で味わう。
もともとはカツオめしと同様、沖で漁師たちが食べていたもの。揺れる船の上で、しかも忙しい合間に食べるので、皿など並べている余裕はない。釣った魚を刺身にし、あるいは細かく叩いたものを、どんぶり飯にのせ、醤油をかけてどんどん食べてしまう。近海で獲れた、生のマグロを豪快に味わえる地元ならではの味覚。
宮崎かつおうみっこ節
宮崎県水産物ブランド品認定
港町の家庭料理として伝統的に作られていた「かつおしょうゆ節」を、添加物なども一切使わずにそのまま再現した「宮崎かつお うみっこ節」が、加工品としては初めて、宮崎県水産物ブランド品に認定。昔ながらの製法から生まれる、港町ならではの味が、人気を集めている。
うみっこ節の原料となるカツオは、日南市大堂津漁港に水揚げされたもの。これを漁港内にある加工場に持ち込んで、大鍋で煮た後、砂糖、醤油、酒、みりん、焼酎でできた煮汁にとり、約1時間煮込んで、そのまま一晩漬け込む。ほっくりと柔らかく、カツオの風味が生きた味わいだ。背骨や皮、小骨なども手作業で丁寧にとりのぞいている。
製造するのは、日南市漁協女性部加工グループ。2006年に開催された「第6回シーフード料理コンクール(全漁連中央シーフードセンター主催)」で、農林水産大臣賞を受賞した伝統のレシピで、港町の味の発信に取り組んでいる。
問い合せ:日南市漁協女性加工グループ TEL:0987-27-2225 |
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