宮崎県季刊誌「Jaja」じゃじゃ

 

Jajaバックナンバー

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Aoshima/Miyazaki-city outskirts
青島・宮崎市周辺

山幸彦と豊玉姫の
ロマンを語り継ぐ青島神社

青島神社
海神の宮の出会い

宮崎市の南部、日向灘に浮かぶ青島は、約5000本のビロウをはじめとする亜熱帯植物で覆われ、まるでどこか南の国の島のような景観を保っている。古くから神域として人の出入りが制限されてきたために、昔のままの植生が残っているのだが、ここは有名な「海幸彦・山幸彦」伝説の舞台でもある。

兄の海幸彦に借りた釣り針をなくした山幸彦は、シオツチノオジという老人の導きで、海の神様である綿津見神(わだつみのかみ)の宮を訪ねる。そこで綿津見神の娘である豊玉姫と出会い、三年の間、楽しく暮した。このエピソードは、浦島太郎の竜宮伝説とよく似ているのだが、物語はさらに続き、二人にはウガヤフキアエズノミコトという子が生まれ、この神様はやがて初代神武天皇の父となる。

青島神社

山の幸を司る神様(山幸彦)と海神の娘(豊玉姫)が結ばれ、最初の天皇へ続く系譜が誕生したこの物語は、古事記神話の中でも重要な場面として描かれている。この二神を祀る青島神社は、宮崎の縁結びスポットの代表格。青空と深い森を背景に、美しく映える赤い社殿は、神話のロマンスを現代に伝えている

素朴な祈りの場としての元宮

本殿から少し離れたところにある元宮は、相当古い時代から霊場があった場所とされ、鬱蒼と茂る亜熱帯植物の森の中に、そこだけ明るく日が射し込む空間が開けている。周辺は、まるで千年、二千年という時間の流れが、ここだけ止っているかのような雰囲気だ。

元宮
本殿から元宮に通じる小径を行くと、ビロウの森の向こうに、赤い小さなお社が見えてくる。

祠(ほこら)のそばにある夫婦ビロウは、二本のビロウがつながって生えており、結びの神の象徴として祀られてきた。ここに、願いに応じて五色の紙こよりを結びつけて願をかける、鈴緒(すずお)が懸けられているのだが、やはり良縁祈願の桃色が多いようだ。

また、近くには神社前の浜で拾った真砂(タカラガイ)を奉納して祈願する「真砂の貝文」や、開運を願う「天(あめ)の平甍投(ひらかな)げ」があり、祈りの場としての時間の厚みを感じさせる。

左)開運を願う天の平甍投げ。右)こよりで願をかける鈴緒。
左)素焼きの杯を投げて開運を願う天の平甍投げ。右)五色のこよりを結んで願をかける鈴緒。

 

神話に初めて登場する男女神を祀る
みそぎ発祥の地、江田神社

パワースポットという言葉が知られるようになるのと、ほぼ同時に脚光を浴びたのが江田神社だ。創建は古く、「続日本後記」には承和4年(837年)に都農神社、都萬神社、霧島岑神社とともに官社となったことが記されている。

みそぎ池

江田神社がある宮崎市阿波岐原(あわきがはら)は、記紀神話で黄泉の国から帰還したイザナギノミコトが、初めてみそぎを行った「筑紫(つくし)の日向(ひむか)の橘(たちばな)の小戸(おど)の阿波岐原」の地とされている。

祭神であるイザナギ、イザナミ二神は、神話世界で初めて登場する男女神で、江田神社はいわば縁結びの神様の元祖のような存在だ。 一帯は広大な松林で覆われており、整備された遊歩道を行くと、みそぎ発祥の地と伝えられる「みそぎ池」がある。日向灘の潮騒と松林のそよぎの中で、古い歴史を感じられるスポットだ。

江田神社

宮崎恋歌