宮崎県季刊誌創刊夏号Jaja
 【特集】堂々、本格焼酎>>宮崎焼酎の概略蔵元を訪ねて蘊蓄知事、焼酎を語る蔵元セレクション

ひむか神話街道をゆく

国見ケ丘

国見ケ丘
神武天皇の孫・建盤龍命が、朝夕国見をしたという国見ケ丘。雲海の名所としても知られ、ここから見おろす景観は見事。

天安河原

天安河原
天照大神が岩戸に隠れた時、この一帯で神々が集まったという。願かけのために、参拝者が積んだ小石が独特の雰囲気だ。

高千穂神社

高千穂神社
毎晩、観光神楽でにぎわう高千穂神社。特に武の神として古くから信仰され、源頼朝ゆかりの秩父杉が現在もその歴史を伝えている。

高千穂峡

高千穂峡
そそりたつ柱状節理をぬって青々とした清流が流れる高千穂峡。初夏の新緑、秋の紅葉の季節は、多くの観光客が訪れる。
高千穂町

神の降りた町、高千穂

混乱に満ちた地上界(あしわらのなかつくに)を平定するために、神々たちの理想郷「高天原」(=天つ国)の支配者である天照大神が孫の瓊々杵尊を降臨させた、その地がここ高千穂だという。降臨の地は、古事記や日本書紀の記述によれば、「日向の国の高千穂の『くしふるたけ』」とされている。これを裏づけるように高千穂町には、「櫛触峰」があり、その中腹には瓊々杵尊など天孫降臨神話ゆかりの神々を祀った櫛触神社がある。その近くには、高千穂の地に水がなかったことから、高天原から水種を運んでできたという「天真名井」が樹齢1300年というケヤキの根元にこんこんと清水を湧かせている。櫛触を峰伝いに進めば、天孫族がはるか遠く天つ国を拝んだという「高天原」がある。

神話を彩る八十八の神社

さらに、高千穂町には、櫛降神社以外にも高千穂八十八社といわれるほど数多くの神社が存在し、これらの神社には実にさまざまな御神体が祀られている。八十八社の総社である高千穂神社は、創建1900年と平安時代の文献にも登場するほどの古社で、瓊々杵尊以降三代の神々と、神武天皇の三番目の兄、御毛沼命を主神とする。御毛沼命は、大和征服後、高千穂に帰還。当時この地を支配していた鬼八という荒ぶる神を退治したといわれている。高千穂神社にはこの御毛沼命がすさまじい形相をした「十社大明神面」という古面が伝わり、高千穂峡には「鬼の力石」という鬼八が投げたとされる重さ200トンもの巨石がある。また、天岩戸神社は、天照大神を祀っており、天岩戸川の岩壁の巨大な洞窟「天岩戸」を御神体としている。岩戸神楽の誕生にも関わりの深いこの神社であるが、「天岩戸」そのものは、立ち入りが禁止されており、見ることができない。

神社を少し上流に歩けば、やがて苔むした洞窟と、積み石に囲まれた祠が姿を現す。天照大神が天岩戸に隠れた際に神々が評議をしたという天安河原である。国つ神と天つ神という異なる文化の融合が織りなす壮大な叙事詩、天孫降臨神話の舞台は、現実と神話が交錯する不思議な雰囲気に満ちている。この町は、必ず太古の神代とつながっている。そんな確信を抱かせる、記紀神話の舞台・高千穂町は、まさに「日本のふるさと」だ。

天の岩戸隠れと高千穂神楽

夜神楽高千穂町は夜神楽の里でもある。全国に数多くある岩戸神楽を代表するともいえる高千穂神楽は、毎年秋から冬にかけて、町内20あまりの集落で舞われる。岩戸神楽とは、弟神である須佐之男命の乱暴を嘆いた太陽神・天照大神が天岩戸に隠れたために世界が闇に包まれたという、天つ国の出来事をベースにしている。これは一大事と八百万(やおよろず)の神々が天安河原に集まって相談した結果、まずは、須佐之男命を地上界に追放。そして天宇受売命に岩戸の前で面白おかしい舞いを踊らせ、それに誘われて天照大神が顔をのぞかせたところを、力自慢の田力男命が岩戸をこじあけ、世界が光を取り戻したというストーリーだ。高千穂神楽三十三番は、冬の日が落ちた午後6時頃に始まり、それから夜を徹して舞い続け、朝日とともに終わる。高千穂神社では、観光神楽として、神楽33番のうち4番を毎日見ることができる。独特のリズムにのって進む神楽を見ていると、観客はいつのまにか神話の世界へ迷い込んでいく。神話と豊かな自然に彩られた高千穂は、町の雰囲気そのものが神楽の一部であるかのようだ。

高千穂町には、ほかにも神話や伝承に由来するスポットが点在している。古事記や日本書紀に登場する地名や人物が、まるで昨日のことのように語られる高千穂町。豊かな自然の中で脈々と息づく神話の世界を、ゆっくりと訪ねてみたい。


宮崎県西臼杵郡高千穂町
九州山地のほぼ中央部に位置する高千穂町は、祖母山(1757m)、親父山(1646m)などの山々に囲まれ、町の中央部を東西に五ヶ瀬川が流れる雄大な自然の中にある。古くは三田井と呼ばれ肥後と日向の中継点として発展してきた。町内には日向神話にまつわる名所が多く点在し、「日本のふるさと」として多くの観光客に親しまれている。

●観光の問い合わせ

高千穂町観光協会
0892-73-1213



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