島浦漁港前のふれあい館で見つけた小アジのいりこ。みそ汁のだしには最高だ。 北浦町宮野浦港の前で、天日干しを作っていた。店主の磯田瞳さん(68)は、仲買人の資格を持つため、市場から直接仕入れる。朝獲れの魚が、早ければ夕方には干物になるという。 地元の海産物で溢れる道の駅北浦。9月1日〜11月30日までは、お隣大分県蒲江町と共同で「伊勢エビ祭り2004秋」も開催される。TEL:0982-45-3811
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リアス式海岸に守られた典型的な海の町延岡市浦城からフェリーに乗って島野浦へ向かう。穏やかな湾の中を進む約20分の船旅の間、左手に見えてくる須美江や下阿蘇の入り江を眺めていると、荒波から船を守ってくれるリアス式の入り組んだ地形が、海で暮らす人たちにとって、どれほど大事な財産であるか分かるような気がしてくる。宮崎市から日向市にかけての単調な海岸線をたどってドライブしてくると、その対比がなおさら印象的だ。 県北の魚どころ、北浦・島浦は、その地形と潮流が作る漁場の豊かさに守られて、漁業のまちとしての歴史を刻んできた。 波の荒い日向灘に面した島野浦島だが、その西側は穏やかで古くから港が開けていた。主に四国や和歌山方面から住みついた人たちがここで漁業を営んできたが、現在の巻き網漁の原型である巾着網は、昭和3年からすでに始まり、この島浦から県内各地へ広がっていった。宮崎の漁業のひとつのルーツといえる土地なのかもしれない。※photo:島浦漁港 北浦・島浦は「すりみ文化圏」?「このへんでは、たいていの家に魚をミンチにする機械があるものだよ」 北浦港近くで、自分でもすりみを作るという地元の主婦の方と話をしていたら、「延岡あたりの魚では、この味は出せない」と胸を張る。 生産や流通技術の向上で、「食」から旬が失われつつあるといわれて久しいが、その時、その海にいる魚を獲ってくる漁業は、海や季節の状況が水揚げにそのまま反映される。このくらいストレートに自然に左右される産業は珍しいだろう。海の恵みは、暮らしに季節のうるおいをもたらしてくれている。 食通に人気、絶品の北浦灘アジマアジのおいしさは言うまでもないが、それを工夫を凝らしてさらにおいしく仕立てて出荷しているのが、宮崎県の水産物ブランドのひとつに認証されている「北浦灘アジ」だ。巻き網で漁獲するところまでは同じだが、通常は船槽で氷詰めにするところを、灘アジは活かしたまま港へ持ち帰る。その後、餌を一切与えずに1週間以上蓄養するのが特徴だ。 餌を与えないことでかえって身に脂がのり、旨みとまろやかさが増すため、刺身には最高の素材となる。蓄養に手間がかかることに加えて、生かして持ち帰るため、少ない量しか獲ることができない。多少割高になるが、その味わいは素晴らしく、主に高級料亭向けとして高値で取り引きされている。 主な旬の魚 (左)北浦・島浦名物のすりみ。軽く焼いて食べると、朝食に絶好だ。(中)魚寿司も名物。手前がマアジで、奥がマサバ。最近、全国的にマサバが不漁のため、北浦町では「北浦本サバ」の名でマサバの養殖も行っている。脂ののりが好評だ。(右)島浦名物のアジ茶漬けは、茶漬けといってもお茶はかけないのが本流。しょうゆ、酒、砂糖に卵を加えた独特の甘みのあるたれで、豪快にいただく。 |