宮崎県季刊誌「Jaja」じゃじゃ
大淀川のボップ釣り

納涼がてらに夏の夜を楽しむ
古式ゆかしいクロダイ釣り

宮崎市の中心部を流れる大淀川の河口付近には、生きたハゼを餌に使う独特のチヌ(クロダイ)釣りがある。岸辺にはホテルなどが林立する近代的な景観をみせるこの川に、おそらくは江戸時代からそのままに伝わるボップ釣りだ。

ボップとは、竹の筒のこと。この竹筒に糸を巻いてリールの代わりにする。手軽なリールを使えば良さそうなものだが、市内で貸し舟店を営む別宮佐雄さんによると、ボップには独自の良さがあり、今でも根強いファンがいるという。

「チヌは神経質な魚ですから、餌をくわえてもすぐに離してしまうことが多いんですな。そこで魚信が出たら糸を出しやすくしておきたいというのが、ボップが使われる理由のひとつ。それに昔は糸が弱かったですから、力の強いチヌとやりとりをするには、竿先に糸を結んで固定するわけにはいかなかった。魚が引けば、無理をしないで糸を出してやるわけです」

手製の竿とボップを操る別宮さん。生きたハゼを餌に使うため、魚信(あたり)があれば大物。スリリングな釣りだ。

餌に生きたハゼを使うのは、大型のチヌが釣れることと、ゴカイなどとちがって、小魚がつつかないこと。「魚信が出れば大物」というスリルを味わうために、夏の夕暮れ、この釣りのファンは大淀川に舟を浮かべる。

「ボップは確かに技術のいる釣りですが、昔の人のようにのんびり釣ればいいんですよ。それに、夕涼みをしながら釣っていると、ついうとうとしますでしょう。そんな時に魚が掛かれば、船底のボップが『カンラ、カンラ』と音を立てて教えてくれますわ。飛び起きますな(笑)」

魚は神経質でも、釣り人は宮崎らしくおおらかなボップ釣り。大淀川に沈む壮麗な夕陽の中で、風流な夏の夜釣りが始まる。

問い合せ:別宮貸舟店 TEL0985-28-6110