宮崎県季刊誌「Jaja」じゃじゃ

記紀の道を歩く

陸風を受けて沖へ進む帆掛け舟。宮崎市から高鍋町周辺にしか伝わっていない幻の漁だ。

西風に乗せて帆掛け舟を沖へ流す
宮崎独特のボラ釣り漁

小さな帆掛け舟を陸風に乗せて沖へ流し、そこから糸を出してボラやフカを釣る帆掛け漁。今ではほとんど見ることはなくなったが、10年ほど前まで県央部周辺の海岸で行われていた宮崎独特の漁だった。南方の島々に起源をもつといわれるこの漁がいつから始まったのかはっきりしないが、国内ではほかに例がなく、県内でも一部にしか伝わっていない。今回、宮崎市の川崎守治さんに倉庫に眠っていた帆掛け舟を出して漁を再現していただいた。

「私は冬のボラばかりでしたから、西風の中で鼻水をすすりながらやっておりました(笑)。人によっては、夏場にフカを釣ることもあったようです。仕掛けははえ縄のようなもので、ハリは20本くらい。専門の漁師は100本も出したそうです。餌はミミズでした。ボラといっても寒の時期の沖ボラですから、刺身でも湯引きにしても、それはうまいものでしたよ」

宮崎市の川崎守治さん

西風が吹く日に帆に風をはらませて舟を沖へ出すわけだが、エンジンも舵もついていないので、なかなか真っすぐに沖へ向かわせるのはむずかしい。風向きによって舟につなぐ道糸の場所を、少し中心から左右にずらすのがコツだそうだ。

今ではボラを食べる機会も少なくなったが、宮崎市内には戦後しばらくまでボラ料理店があったほど親しまれた魚だった。今でも、食べてみると沖ボラのうまさには目をみはる。この宮崎独特の漁、若い世代に技術が伝わっていってくれないだろうか。沖ボラの味とともに。