宮崎県季刊誌「Jaja」じゃじゃ

素潜り漁

速い海流の底から海の恵みを
一つ一つ拾い上げる素潜り漁

川南漁協ウニ部会(13人)で部会長を務める河野孝さん(52)は、子供の頃から海を遊び場として育った生粋の海の子だ。25歳まで海上自衛隊に勤務していたが、やはり海が好きということで漁業に転じて、素潜り漁でウニやアワビ、カキなどを採っている。

水中めがねひとつで海に潜り、息が続くかぎり貝などを採る素潜り漁は、全国的には「海女(あま)」として女性の仕事であることが多いが、県内には女性の素潜り漁師はいない。

素潜り漁

「私の両親もそうでしたが、昔から半農半漁でやってきましたから、女性は農業、男性は漁業という棲み分けになっていたのかもしれませんね。それに宮崎は外海で海流が速いので、女性にはつらい仕事だと思います」

川南町から都農町にかけての沿岸は、小丸川や名貫川が山から栄養を運び、海草が豊かで、それがウニやアワビを育ててきた。

「水中にいられる時間は40秒がせいぜい。魚突きなら1分は大丈夫ですが、ウニや貝類は海底で石を転がしたりするので、息が続きません。ウニ漁師は手が荒れているのでわかりますよ。ウニは海草を食べるのに消化液のようなものを出すので、それで皆、手の皮がむけてしまうんです」

ウニ

豊かな川南の海も、昨年の台風で真水や土砂が沿岸に流れ出て、例年とは比較にならないほど漁獲量が減っている。

「以前の状態に戻るには数年かかるかもしれません。その間は放流ものが育つので漁はできますが、天然ものの回復を心待ちにしているところです」