宮崎県季刊誌「Jaja」じゃじゃ

Jajaバックナンバー

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山里に受け継がれる伝統の味覚
森の恵みを味わう

伝統の味覚

地産地消、という言葉が定着してきた。これは本来、「身土不二」と同じように、その土地でとれたものを、ふさわしい季節に食べることの大切さをいっているのだろうが、近年は、「なるべく地元のものを食べましょう」というニュアンスの方が強くなっているようだ。 交通が不便で、物資が豊かでなかった時代、山里では地産地消というよりも、むしろ自給自足に近い生活だったようだ。

そんな時代から伝わる各地の伝統料理は、どうしてもハレの日の料理が多く残ることになる。 今の時代からすると、むしろ地味に思えるものも多いのだが、じっくりと味わうと、それが食べられていたシーンの華やぎがよみがえってくるようだ。 鍋の煮しめに歓声を上げ、年に一度のそばに、手を合わせて食べていた時代の感性を、時々、思い返してみたい。 その喜びが、ふるさとの野山や森からもたらされる恵みであったことも。

そば

小麦粉を使わずに打つ、 太く、しっかりした 山のそば。
米良地方の古老に「そばを麺で食べるのは、年越しの夜くらいだった」と聞いた。ふだんは団子や、そばがきで食べていたそうだから、これもハレの料理だったのだろう。宮崎では現在も、少量ながら焼畑によるそば栽培が行われており、逸品として人気を呼んでいる。

そば

猪の塩焼き

滋味深い脂の味わいが本領 シシの塩焼きは、山のご馳走だ。
海辺の猪よりも、山の猪の方がうまいという。その山でも、谷筋に近いところに棲むものがいいらしい。また、ドングリを食べているものが味がよいともいう。猟帰りの男たちが、味自慢をしながら囲炉裏で焼く。そんな風情を思わせる豪快な山のご馳走だ。

猪の塩焼き

菜豆腐

季節の野菜を刻みいれた豆腐 味噌をつけた田楽もおいしい。
豆腐に季節の野菜を刻み入れて仕上げる椎葉村のハレの日の料理。具は大根葉をはじめ、シソ葉、カラシ菜などさまざまで、季節には藤の花を入れることもある。家ごとに、その美しさを競ったものなのだろう。県庁前楠並木通りの日曜朝市で出品されることも。

菜豆腐

はち汁

スズメバチの仔でとる絶品の出し汁は、 まろやかで上品な味わい。
諸塚村で人をもてなす時の、とっておきの料理。苦労して採ってきたオオスズメバチの仔を、油で炒めた後に水を加えて煮立て、そうめんの出し汁にする。塩で味を調えただけの出し汁は、上品なまろやかさがあり、深い味わいだ

はち汁

ヤマメの甘露煮

渓流に棲む川魚の女王を、 柔らかく炊きあげる甘露煮に。
宮崎は県外からも多くの釣り客が訪れるヤマメの宝庫。また、日本で初めてヤマメの人工養殖に成功した先進地でもある。頭から丸ごと食べられるほど柔らかく炊きあげた甘露煮は、お茶漬けにしてもおいしい。

ヤマメの甘露煮

焼き椎茸

深い山の香りがする生椎茸の風味を、 炭火焼きで引き出す。
生の椎茸は、トウモロコシやフルーツと同じように、鮮度が命。水気たっぷりの新鮮なものを、炭火でさっと焼くと、こんなにうまいものだったかと驚く。日本有数の椎茸産地、宮崎ならではの味わいだ。

焼き椎茸

煮しめ

椎茸や干し竹の子を使う ハレの日の定番料理。
ハレの日の主役だった煮しめは、県内各地にあるが、それぞれに個性があって楽しい。山間部では椎茸や干した竹の子、自家製のこんにゃくが定番の具。西米良村では、かつて貴重品だった塩いわしを丸ごと一尾使うものが伝わっている。

煮しめ

わくど汁

そば粉を使う椎葉の団子汁 あたたかい囲炉裏端がよみがえる。
椎葉村の伝統料理。「わくど」とは蛙のことで、そば粉で練った団子を、ぐらぐらたぎる湯の中に落とすと、まるで蛙が泳ぐように見えることから、この名がついたという。椎茸や根菜などと味噌仕立てで煮込む、そば粉を使う団子汁だ。

わくど汁