宮崎県季刊誌「Jaja」じゃじゃ
みやざき地頭鶏飼育・加工

愛好家の間で保存されていた地頭鶏は、霧島山麓で飼われていた。薩摩鶏や軍鶏に似た姿と、味の良さで知られていたが、体型が小さく、成長も遅いため、食用としてはあまり注目されていなかった。『みやざき地頭鶏』は、地頭鶏の味わいを生かした品種。現在、小林にある「みやざき地頭鶏ひなセンター」で厳重な管理のもと生産された雛が、県内24戸の農家で育てられている。

国の天然記念物・地頭鶏の味わいを、
手間ひまかけた飼育で再現した究極の地鶏。

日向市美々津/橋爪達典さん

地鶏なのに口あたりが柔らかい。そして噛みしめるほどに広がる深い味わい。県内で年間20万羽しか生産されていない『みやざき地頭鶏(じとっこ)』は、霧島山麓で飼われていた国の天然記念物に指定されている地頭鶏をもとに、宮崎県畜産試験場で長い年月をかけて開発された、注目の新品種だ。

このみやざき地頭鶏を「宮崎牛に匹敵するブランドに育てたい」と飼育に取り組んでいる宮崎ひむか地鶏有限会社社長の橋爪達典さんは、国が定めた特定JAS「地鶏肉」規格に適応した方法で飼育しており、平成16年に県内で唯一、特定JASの認定を受けている。

「もともと鶏は正月や祝い事などのハレの日に食べるものでした。私が子供の頃までは大変なごちそうでしたが、ブロイラーの普及で身近になった反面、味の方は昔とは異なるものになっています。また、全国にさまざまな鶏がおり、実にさまざまな地鶏が流通しているのが現状です。『みやざき地頭鶏』は、地頭鶏をベースにした最高の素材に惜しみなく手間をかけて最高の鶏に仕上げる、究極の地鶏といえます」

みやざき地頭鶏

『みやざき地頭鶏』は、小林にある「みやざき地頭鶏ひなセンター」で厳重な管理のもと生産された雛を導入し、育て始める。ブロイラーに比べ成長速度の遅い「みやざき地頭鶏」はブロイラーの2〜3倍にあたる4〜5か月の飼育期間が必要だ。飼育密度も国の基準より五倍も厳しい1平方メートルあたり2羽以下と、生産効率は非常に低い。しかし、ゆったりとした環境のもとで、手間ひまかけて育てられるため、病気に強い健康な鶏になり、それが鶏本来の深い味わいに結びついている。

鶏舎のある日向市美々津地区の山中は緑と湧き水に恵まれた環境にあり、鶏たちもこの湧き水を飲んで育つ。飼料には腐葉土に含まれる菌類を混ぜて与えるため、より抵抗力のある鶏に育つそうだ。

「昔、庭で放し飼いされていた地鶏のおいしさを再現したのが『みやざき地頭鶏』。血統だけでなく育て方も含めて、理想を追求したブランドです。今のところ生産量が限られているのが残念ですが、さらに生産を拡大して、この地鶏の魅力を多くの方に知っていただきたいですね」

噛みしめるほどに広がる深い味わい