宮崎県季刊誌「Jaja」じゃじゃ
ミニトマト栽培

徹底した減農薬と土づくりへの取り組みから生まれた尾鈴のミニトマト。たわわに実ったその一粒一粒に、エコファーマーの誇りと努力が込められているようだ。

原点は土。町ぐるみの環境循環型栽培で、
日本農業賞大賞を受賞したミニトマト産地。

都農町/稲田憲一さん

地域一体となった環境循環型栽培による産地づくりが高く評価され、第34回日本農業大賞を受賞したJA尾鈴ミニトマト部会。その部会が生産する“みやざきエコミニトマト”は、いかにも南国の太陽から生まれたような味の濃さとばらつきのない品質で、時に出荷が間に合わないほどの人気を誇っている。「安全・安心」ではなく『より安全・安心』です」という部会長の稲田さんの言葉通り、県の基準より大幅に厳しい減農薬栽培を実践。38戸の部会員全員がエコファーマーの認定を受けた農家だ。

「10年前に部会を結成したのは、実は品質のばらつきがひどくて産地として認めてもらえなかったからでした。皆で話し合ううちに、どうせやるなら輸入野菜による価格低迷に対処するためにも、外国では絶対に真似ができない安全・安心を徹底したものを作ろうと、理想のミニトマトづくりを始めたのです。安ければいいというものではないよ、という思いもありましたね」

稲田憲一さん

「ほら、土の中に菌糸が伸びているのが見えますよ」と稲田さん。慈しむような土づくりから、エコファーマーたちの仕事が始まっている。

最大のポイントは土づくり。都農町などが建設した「グリーンガイア実験プラント」とも連携し、ここで生産される家庭の生ゴミなどから作る菌体肥料を活用することで、土が見違えるように豊かになり、地域のゴミを土に返す環境循環型栽培も実現した。土壌に発生する病害虫の駆除にも薬品を使わず、オフシーズンとなる真夏の1か月間、ビニールハウスを閉め切って高温に保つ太陽熱消毒を行っている。

「安全・安心とは、『誰が、どこで、どのように作ったのか』がはっきりわかり、その過程に責任を持つことだと思います。それが産地づくり、ブランドづくりということではないでしょうか」

減農薬、有機栽培はひとつのトレンドにもなっているが、農家の立場からみれば大変な労力を引き受ける覚悟がいる。ただ時代の流れに乗るというだけでなく、それによって確かな産地づくりをめざすという目標を地域で共有できたことが、同部会の成功の理由なのだろう。10年前、バイヤーにそっぽを向かれたという稲田さんたちのミニトマトは、現在では年間1200トンの生産量、6億2000万円の販売金額をあげるトップランナーに成長している。

トマトスケッチ