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![]() Photographer Jin Akutagawa ※タイトルの写真は、向山地区の水無川。ヤマメの棲む渓流。 |
椎葉村松木地区。村道から屋敷へ続く坂道を石垣添いに登ると、苔に覆われた大きな水舟が目に入る。幹回りがふた抱えもありそうな松の木を半割にして、中をくり抜き水槽にしたものだ。那須久喜さん(69)が蜂蜜一升と交換して手に入れた松である。透き通った山の湧き水がホースから流れ込み、麦茶がペットボトルに入れて冷やしてあった。 久喜さんと妻の久子さん(63)は翌日、村内で牛の品評会が行われるというので、出品する去勢牛の手入れに余念がない。
周りを山また山に囲まれた谷間の一軒家。久喜さんはこの家で生まれ育った。池でコイを飼い、山で捕まえたイノシシの小屋もある。牛は親牛6頭、子牛4頭。このところ少なくなっていた蜜蜂も、今年は50群近く巣箱に入ったそうだ。今年もそろそろ蜂蜜採りの時期である。 「蜜蜂に刺されるちゅうことはないわ。蜜を貰いに来たよ、と言うてやって巣箱の入口に息を吹きかけて。それから蜜を貰うと、蜂は刺さんとよ。いきなり蜜を採ると蜂は刺すかいね。今から寒なるけ、冬、蜂が喰うとに半分は蜜を残さないかんとたい」 生き物の気持ちを察し、生き物と共存する暮らしが椎葉では展開されている。「椎葉には何もない」という言葉を聞くこともあるが、それは椎葉の本質を見ていないということだろう。私は、「宮崎の魅力は椎葉にある」と信じている。
1)椎葉の植物に詳しい椎葉クニ子さん。自宅の民宿に泊めていただいた。 |